家族の不思議 〜世代間境界の事例〜
その子は、頭痛で欠席することが時々ありました。
医療機関に行っても異常が見つからず、原因がわかりません。
だんだんと頭痛がひどくなり、欠席する日が多くなっていきました。
自宅は自営業。
夜遅くまで、おじいちゃん、お父さん、お母さんの3人が家業を回し、子育てはおばあちゃんが担当していました。
みんながそれぞれの仕事を頑張っている家族でした。
そんな中で、その子に原因不明の頭痛という症状が出ました。
医療機関にもかかっているので、私たちはその子の成り行きを見守っていました。
数か月たった頃からだんだんと頭痛がおさまり、徐々に欠席が減り、やがて毎日学校へ来られるようになりました。
何があったのでしょう・・・
ある時、おばあちゃんが、自分が家業の方の手伝いを頑張るので、お母さんは子供たちが落ち着くまで子育てに専念すればいいと言い出したそうです。
そこで、おばあちゃんとお母さんとの役割交代が起きました。
どのような過程で、どのような話し合いがされたのかはわかりません。
でも、その役割交代が家族に変化を呼び、原因不明の頭痛という問題を解決に導きだしたのです。
おじいちゃん世代、お父さん世代、子どもたち世代と、世代の間には目に見えない境界があります。
おじいちゃんのパートナーはおばあちゃんで、おじいちゃん、おばあちゃんのポジション。
お父さんのパートナーはお母さんで、子どもたちとってお父さんとお母さんのポジション。
子どもたちは、家族にとって子どものポジションにいる。
あたりまえのことのようですが、よく見てみるとこの世代間境界があやふやになっていたり、誰かが境界線を飛び越えて自分以外の世代のポジションにいたり、パートナーが違ってしまっていることがあります。
お父さんのパートナーが、おばあちゃんになっているような場合。
子どもと親世代の境界線があやふやで、子どもと親のポジションがよくわからなくなってしまっている場合。
おじいちゃんはよかれと思って意見をいっているのですが、世代の境界を飛び越して若夫婦世代をコントロールしたがっている場合 などなど。
この家族の場合、お母さんのポジションにいたのは、お母さんではなくおばあちゃんでした。
お母さんがお母さんのポジションにいるようになったとき、子どもの症状が消えていきました。
誰が悪いということはありません。
みんなが良かれと思ってやっていたのです。
でも、お母さんのポジションにお母さんでない人がいると、子どもが症状を出すことがあります。
逆に言えば、子どもが症状を起こすことによって、お母さんをお母さんのポジションに戻そうとしていたともいえます。
世代間境界は、世代の間に垣根を作るということでは決してありません。
夫婦がパートナーとして機能しているということです。
その形は、夫婦によって色々とあるでしょう。
どんな形であれ、夫婦がパートナーとなっていると、世代を飛び越えて他の世代の役割までする必要がありませんし、することができなくなります。
ちょっとパートナーシップがとれていないなと思ったら、少しでいいのでパートナーだけですることを増やすと境界線が強まります。
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